会長からのご挨拶
新しい年が明けました。今年こそは良い年になって欲しいと願っております。
昨年は、敵対的買収あるいはM&Aという言葉が市民権を得ましたし、それとともに会社は誰のものかについて大いに議論が沸きました。小さな政府とりわけ象徴的には郵政民営化をめざす自民党が総選挙で圧勝しました。こうした市場化の波が押し寄せる中で、過度な効率主義が甚大な被害をもたらすことを列車事故で経験しました。一方、審査における形式主義で表面化した潜在的危険がマンション住民を不安に陥れております。本来、自由化ないし市場化の流れは、事後的チェックの強化をもたらすのですが、これが形骸化するといかに危険であるかを学んだわけです。
悪い事をしていないから情報開示の必要はないという言葉に日本的な甘えを垣間見ることが出来ます。つまりここでの情報開示はどうやら悪事が露見したときの「白状」に相当するようです。やっかいなことに、この種の「白状」がしばしば世間を賑わすので情報開示とはそういうものだと考える人もいるようです。
しかし、本学会の主力研究は、「白状」の解明にあるのではなくて、説明責任の履行ないし正統性の主張といった観点からの情報開示の意義に焦点が置かれているのです。説明責任の履行であれ、正統性の主張であれ、重要なことは、情報開示の効果ないし情報の有用性なのであります。こうした観点から、本学会では、創設以来、実証研究の蓄積を行ってきています。それら実証研究を踏まえて、開示制度の議論も深まってきていきます。
吉村光威初代会長は情報開示に社会の浄化効果を求めておられました。國村道雄二代目前会長は、実証研究を重視され、情報開示の視点から行う諸制度改革(ビッグバン)の評価を求めておられました。また、お二人とも学会からの情報発信を重視されてこられました。具体的には、厳しい査読付の『現代ディスクロージャー研究』が他学会からも認知されるようになってきました。これは國村元編集委員長と須田一幸前編集委員長・現事務局長のゆるぎない方針の賜物です。私はこうした伝統を受け継ぎつつ、研究領域の拡大と深化を求めて行きたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
平成18年元旦
ディスクロージャー研究学会
会長 柴 健次