ディスクロージャー研究学会



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文書No.
970220

都銀ホームページ採点、銀行アナリスト

    総合評価で富士・住友・三和

    97/ 2/20 日経金融新聞  

 都市銀行各行がインターネット上に開設しているホームページの内容拡充を競っている。情報開示の有力な手段としてばかりでなく、最近では店舗を経由せずに顧客と取引する接点として、ホームページの重要性はますます高まっている。三人の銀行アナリストにホームページを採点してもらい、今後の課題を探ってみた。

 デザインなどホームページの見やすさで評価が高かったのが三和銀行。グラフィックや写真などを多用したホームページが多いなか、同行のものは比較的シンプルに仕上がっている。「全体を表示するまで時間がかからないうえ、メニューも個人、法人、投資家などに分けている点が評価できる」(長谷川浩也・日興リサーチセンター事業調査部アナリスト)という。

 各行のメニュー内容はほぼ同様で、「工夫が見られない」とする意見が多かった。その中では、「第一勧業銀行が宝くじの当選番号を発表したり、官公庁へリンクできるようにして独自性を発揮している」(西村英一郎・山一証券経済研究所アナリスト)のが目立った。

 決算短信など情報開示に対する取り組みでは「三和、東京三菱銀行、住友銀行、富士銀行のコメントは分析するうえで十分使える」(幾代雄四郎・スミスバーニー証券東京支店調査部ファースト・バイス・プレジデント)という。「東海銀行が不良債権処理などにコメントを出していることは評価できる」という意見もあった。

 三和のホームページは決算データを表計算ソフトで加工できるよう引き出せるダウンロードサービスを実施しており、「アナリストとして大変ありがたい」(西村氏)という。その一方で、「利益や貸出金などのデータを時系列で取り込めるようにしたほうがむしろ良いのでは」(長谷川氏)という指摘もあった。

 個人顧客向けサービスとしては、富士のローンシミュレーションの評価が高い。各行とも各種ローンのシミュレーションをサービスしているが、同行ではいち早く取り組んでおり、充実している。預金商品が豊富に紹介してあることも評価されている。

 ホームページを仮想店舗としてとらえたサービスでは「住友が一歩リード」(西村氏)している。同行では一月二十七日からホームページで残高照会や資金移動を受け付けるインターネット・バンキングに取り組んでおり、「個人顧客にとって魅力的なサービスになる可能性もある」とする声も多い。

 総合評価としては、三人のアナリストのうち二人からA(良い)の評価を得ている富士、住友、三和の三行が現時点で充実したホームページを作成しているといえる。

 都銀のホームページには問題点も多い。その代表例がニュースの更新頻度の低さ。最新ニュースを掲載していない銀行が多く、「情報発信という意味では得るものはほとんどない」(長谷川氏)という厳しい意見もあった。インターネットの長所である即時性を生かし、ニュースリリース程度はリアルタイムで更新するよう工夫が必要だ。

 海外の投資家などから注目を集めているにもかかわらず、英語での情報発信に十分対応できていないことも懸念材料だ。なかでも北海道拓殖銀行は「英語のコメントがほとんどなく極めて残念」(幾代氏)という意見もあった。

 情報通信技術の発展でインターネット利用者は今後も増加する見込み。他行のサービスに追随するのではなく、独自性を発揮した魅力的なホームページを作成することが顧客や投資家を引き付けるカギとなりそうだ。 (経済部 渡辺晃)



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