文書No.
971005
――閉鎖的なイメージ打破へ
トヨタ自動車グループが情報発信機能を強化している。PRやIR(インベスターリレーションズ=投資家向け広報)機能を充実させ、「外に対して閉鎖的」という従来つきまとったイメージからの脱却を目指す。アイシン精機が広報担当部署を「室」から「部」に改組したほか、デンソーはトップと証券アナリストとの懇談会を増やした。「グローバルスタンダード(世界標準)経営」を掲げ、環境問題などで情報開示を進めるトヨタの意向も働いているようだ。 トヨタグループは昨年末から、ペルーの日本大使公邸人質事件や社員を乗せたヘリコプターの墜落事故、グループの自動車生産に支障をきたしたアイシン精機の工場火災など突発的事件に相次いで見舞われ、危機管理体制が問われた。今年二月末には、グループ十三社の広報担当役員が初めて顔を合わせ、今後役員クラスが年数回集まり企業広報のあり方を話し合うことにした。 アイシンは六月末、記者への対応や社内報の編集などを担当する「情報広報室」を「広報部」に改組。専任の部長を置いたほか、部員も十人から十三人に増員した。鈴木泰寛取締役は「マスコミなどへ積極的に情報提供し、開かれた広報を目指す」と強調する。 デンソーは六月末、東京支店に広報部の出先を設置、岡部弘社長の記者会見やアナリストとの懇談の機会を増やしている。担当者は当面、本社で兼務するが、九八年ごろには部員を常駐させる計画。豊田合成も年初、総務部内に「広報室」を新設した。 各社が広報に力を入れる理由の一つは、自動車生産の伸びが期待できない中、多角化によって最終消費財分野の製品が拡大、知名度の向上に迫られていることだ。「部品メーカーは地味な存在でよい」との発想から脱皮を迫られている。 携帯電話や浄水器など新規事業の売り上げが一千億円に近付いたデンソーは、「会社の規模の割には知名度が低かったが、自社ブランドの製品も増えており、今後は積極的に社名を売り込みたい」(岡部社長)と強調する。 トヨタも含め各社がグローバルスタンダードを目指して「株主重視」の政策を掲げていることも要因。財務や経営に関する正確な情報を、自社に不利な内容も含めいち早く公表すべきとの認識が高まっている。 トヨタ自体も「エコプロジェクト」の名の下に環境問題への取り組みをアピール中。四月には米国、五月には日本で近く発売するガソリンエンジン・電気モーター併用のハイブリッド乗用車のマスコミ向け試乗会を開いた。五月には欧州で、七月には東京で、環境に関する技術説明会や討論会なども開催した。こうしたトヨタの姿勢がグループの部品メーカーを刺激している。(日経名古屋支社 野沢康二)
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