ディスクロージャー研究学会



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文書No.
960801

東京証券取引所 [株券の上場制度]

(1)  上場の意義
 証券取引所に株券が上場された会社(上場会社)については、一般に次のようなメリットがあると言われています。
  1. 上場会社は、有価証券市場において公募による時価発行増資、転換社債等の発行等、 直接金融の道が開かれ、資金調達能力が増大することにより、体質の改善・充実を図ることができます。
  2. 上場会社となることによって社会的に認知され、また将来性のある企業というステイタスが得られ、会社の知名度の向上と同時に取引先・金融機関等に対する社会的信用力が高まります。また一方で、役員・従業員の会社に対する自覚が高まり、それが業績に反映されるとともに、優秀な人材も確保できます。
  3. パブリック・カンパニーとなることから、個人的な経営から脱却し組織的な運営が構築され、内部管理体制の充実が図られます。

 上場会社は、以上のようなメリットを享受できると言われていますが、その一方で、投資者保護の観点から、決算発表、企業内容の適時・適切な開示等が要求されるなど、新たな社会的責任や義務が生じることにもなります。

(2)  新規上場
 新たに株券を上場しようとする新規上場申請会社は、「株券上場審査基準」における数値基準に適合していることが必要とされます。東京証券取引所は、この基準に適合したものについて、a企業の継続性及び収益性、b企業経営の健全性、c企業内容等の開示の適正性、dその他公益又は投資者保護の観点から本所が必要と認める事項について審査を行っています。その結果、上場が適当と認められた株券は、大蔵大臣の承認を経て上場することになります。
 なお、新規性を有する事業を営んでいる新規上場申請会社については、通常の基準より緩和された別の基準(特則)が適用されます。
(3)  上場株券の区分
 上場株券には内国株券と外国株券があり、内国株券は市場第一部銘柄と市場第二部銘柄に区分されます。なお、新規上場内国株券は、原則として市場第二部銘柄に指定されますが、特則基準を適用された場合には、併せて市場第二部特則銘柄に指定されます。
 東京証券取引所は、市場第二部銘柄について、「上場株券の市場第一部銘柄指定基準」における株式の分布状況や売買高等に係る基準に適合するか否かを決算期ごとに審査し、適合した銘柄を市場第一部銘柄に指定します。また、市場第一部銘柄が「上場株券の市場第一部銘柄から市場第二部銘柄への指定替え基準」における株主数等の基準に該当した場合は、市場第二部銘柄に指定替えします。
(4)  上場管理
 東京証券取引所は、上場有価証券の適切な管理を行うために変更上場等に関しての手続を定めるとともに、東京証券取引所の定める「上場有価証券の発行者の通告等に関する規則」では、上場会社は東京証券取引所に対して経営に重大な影響を与える事実及び上場有価証券に関する権利等に係る重要な決定の通告等を行うこととしています。
 東京証券取引所では、投資者に会社情報が正確、迅速かつ公平に開示されるよう上場会社に対して会社情報の適時・適切な開示(タイムリー・ディスクロージャー)を要請し、上場会社の協力のもとにち密な上場管理を行っています。
(5)  上場廃止
 上場株券の絶対流通量が不足し公正な価格形成が困難になったときや上場会社がいわゆる倒産の状態となったとき等は、当該株券は、「株券上場廃止基準」に該当することとなり、大蔵大臣の承認後、上場廃止となります。
 東京証券取引所は、上場株券が上場廃止基準に該当するおそれがある場合には、当該株券を監理ポストに割り当て、その事実を周知することとしています。また、上場廃止が決定された場合には、当該株券を整理ポストに割り当て、一定期間(原則として3か月間)整理取引を行わせることとしています。



「株券上場審査基準」の概要

「株券上場審査基準」の概要
(内国株。1単位の株式数が1,000株の場合)

平成8年8月1日現在
基準名
株券上場審査基準
特 則(注3)

 
上場株式数a.東京周辺: 400万株以上
b.東京周辺以外: 2,000万株以上
200万株以上






少数特定者
持株数(注1)
上場のときまでに上場株式数の75%以下(当分の間80%、上場後最初の決算期に75%)となる見込み
株主数
(注2)
上場のときまでに下記の人数以上となる見込み
上場株式数が
a. 1,000万株未満の場合: 800人
b. 1,000万株以上 2,000万株未満の場合:
    1,200人
c. 2,000万株以上の場合:
   2,000人+ 1,000万株ごとに
   100人(上限 3,000人)
上場のときまでに、300人以上となる見込み
公開株式数 50万株以上の公募又は売出しを行うこと
設立後経過年数 3年以上(分社化の場合は2年)
株主資本
(純資産)の額
直前事業年度末日において10億円以上、かつ、1株当たり100円以上 直前事業年度末日において2億円以上
利益配当 上場前1年間有配(東京周辺の未公開会社は無配でも可)、かつ、 上場後1株当たり5円以上継続の見込み
利益の額
a.最近3年間の利益の額
最初の1年間: 1億円以上
次の1年間 : 1億円以上
最近の1年間: 4億円以上
b.1株当たり利益の額
最近3年間のうち最初の1年間又は次の1年間のいずれ か及び最近1年間の各事業年度の利益の額が平均発行済株 式数につき1株当たり15円以上、かつ、最近1年間の利益 の額が期末発行済株式数につき1株当たり20円以上
 最近1年間の各事業年度の利益の額が平均発行済株式数につき1株当たり10円以上。ただし、新規事業が赤字の場合には、最近1年間において利益計上、かつ、新規事業以外の部門における利益の額が平均発行済株式数につき1株当たり10円以上
財務諸表等の虚偽記載  最近3年間「虚偽記載」のないこと、かつ、最近1年間の監査 意見が「無限定・適正」 最近2年間「虚偽記載」のないこと、かつ、最近 1年間の監査意見が「無限定・適正」
その他 株式事務代行機関の設置、株券の様式、株式の譲渡制限 同左
 
(注)
  1. 「少数特定者持株数」は大株主上位10名及び特別利害関係者(役員等)が所有する株式の総数。
  2. 「株主数」は1単位の株式の数以上を所有する株主の数(大株主上位10名及び特別利害関係者を除く。)。
  3. 特則の対象は、新規性を有する事業を営んでいる企業とする。この場合において、(1)営業の主体が東京周辺にあること、(2)新規事業を企業化した日の属する事業年度の末日から上場申請日の直前事業年度の末日までに15年以上が経過していないこと、(3)上場申請日の直前事業年度において、新規事業に係る売上高が総売上高の20%以上であること、及び(4)新規事業を企業化した日の属する事業年度の直前事業年度において、研究開発に要した費用が総売上高の3%以上であることを要するものとする。



「上場株券の市場第一部銘柄指定基準」

「上場株券の市場第一部銘柄指定基準」及び
「上場株券の市場第一部銘柄から
 市場第二部銘柄への指定替え基準」の概要
(内国株。1単位の株式数が1,000株の場合)

平成8年8月1日現在
基準名
上場株券の市場第一部
銘柄指定基準
上場株券の市場第一部銘柄から
市場第二部銘柄への指定替え基準

 
上場株式数 2,000万株以上      2,000万株未満






少数特定者
持株数(注1)
直前事業年度末日において上場株式数の70%以下
株主数
(注2)
直前事業年度末日において下記の人数以上
 上場株式数が
a. 3,000万株未満の場合: 3,000人
b. 3,000万株以上 2億株未満の場合:3,100人+1,000万株ごとに100人
c.2億株以上の場合:4,800人+ 2,000万株ごとに 100人
下記の人数未満(猶予期間1年)
上場株式数が
a. 3,000万株未満の場合: 2,000人
b. 3,000万株以上 2億株未満の場合:
 2,100人+ 1,000万株ごとに100人
c. 2億株以上20億株未満の場合:
 3,800人+ 3,000万株ごとに 100人
d.20億株以上の場合
 9,800人+ 5,000万株ごとに 100人
株主資本
(純資産)の額
直前事業年度末日において1株当たり100円以上
利益配当 最近3年間1株当たり5円以上、かつ、継続して5円以上の見込み
利益の額 a.最近3年間の利益の額
 最初の1年間:1億円以上
 次の1年間:1億円以上
 最近の1年間:4億円以上

b.1株当たり利益の額
 最近3年間のうち最初の1年間又は次の1年間のい ずれか及び最近1年間の各事業年度の利益の額が平均 発行済株式数につき1株当たり15円以上、かつ、最近 1年間の利益の額が期末発行済株式数につき1株当た り20円以上

財務諸表等の虚偽記載 最近5年間「虚偽記載」のないこと
売買高
(注3)
最近6か月間及びその前6か月間それぞれの月平均売買高が20万株以上 最近1年間の月平均売買高が4万株未満
(注)
  1. 「少数特定者持株数」は大株主上位10名及び特別利害関係者(役員等)が所有する株式の総数。
  2. 「株主数」は1単位の株式の数以上を所有する株主の数(大株主上位10名及び特別利害関係者を除く)。
  3. 東京証券取引所以外に大阪証券取引所又は名古屋証券取引所にも上場している場合には、別途基準がある。



「上場有価証券の発行者の通告等に関する規則」の概要

「上場有価証券の発行者の
   通告等に関する規則」の概要

 同規則においては、上場会社が行う、経営に重大な影響を与える事実及び上場有価証券に関する権利等に係る重要な決定の通告等について定めています。上場会社が東京証券取引所に通告する情報は、概ね次の3つに区分することができます。
 (1)上場有価証券に関する権利等に係る重要な事項についての決議又は決定の情報(決定事項に関する情報)
 (2)経営に重大な影響を与える事実の発生に係る情報(発生事項に関する情報)
 (3)重要な会社情報として認められる決算情報(決算に関する情報)

各情報区分該当項目一覧表
1.決定事項に関する情報
  • 株式、転換社債及び新株引受権付社債の発行
  • 資本の減少
  • 株式の分割又は併合
  • 配当の額又は方法の変更
  • 合併
  • 営業の全部又は一部の譲渡又は譲受け
  • 解散
  • 新製品又は新技術の企業化
  • 業務上の提携又は業務上の提携の解消
  • 子会社の異動を伴う株式又は持分の譲渡又は取得
  • 固定資産の譲渡若しくは取得又はリース
  • 営業の全部又は一部の休止又は廃止
  • 上場廃止の申請
  • 破産、和議開始又は更生手続開始の申立て
  • 新たな事業の開始
  • 公開買付け又は公開買付けに関する意見表明
  • 代表者の異動
  • 合理化等による人員の削減
  • 債務超過による上場維持の断念
  • 商号の変更
  • 決算期の変更
  • 1単位の株式の数の変更
  • その他会社の運営、財政状態、経営成績等に重要な影響を与える決定事項に関する情報

2.発生事項に関する情報

  • 災害又は業務に起因する損害
  • 主要株主又は主要株主である筆頭株主の異動
  • 上場廃止の原因となる事実
  • 訴訟の提起又は判決等
  • 仮処分命令の申立て又は決定等
  • 行政庁による法令に基づく処分又は行政庁による法令違反に係る告発
  • 親会社の異動
  • 破産、更生手続開始、整理開始又は企業担保権の実行の申立て又は通告
  • 手形等の不渡り又は手形交換所による取引停止処分
  • 親会社又は子会社に係る破産の申立て等
  • 債権の取立不能又は取立遅延
  • 取引先との取引停止
  • 債務免除等の金融支援
  • 資源の発見
  • 子会社に係る決定事項又は発生事項
  • 有価証券の発行等に関するその他の重要事項
  • その他会社の運営、財政状態、経営成績等に重要な影響を与える発生事項に関する情報

3.決算に関する情報

  • 決算内容
  • 業績予想の修正等
  • 配当予想の修正等
  • 有価証券の含み損



「株券上場廃止基準」の概要

「株券上場廃止基準」の概要
(内国株。1単位の株式数が1,000株の場合)

平成8年8月1日現在
基準名
株券上場廃止基準
特   則

 
上場株式数 400万株未満 200万株未満






少数特定者
持株数(注1)
上場株式数の75%(当分の間80%)超(猶予期間1年)
株主数
(注2)
下記の人数未満(猶予期間1年)
 上場株式数が
a. 1,000万株未満の場合: 400人
b. 1,000万株以上 2,000万株未満の場合: 600人
c. 2,000万株以上の場合:
1,000人+ 1,000万株ごとに 100人(上限 2,000人)
150人未満
(猶予期間1年)
株主資本(純資産)の額、利益配当 [無配継続、債務超過]
最近5年間無配継続、かつ、最近3年間債務超過の場合
[債務超過]
最近3年間債務超過の場合
財務諸表等の虚偽記載 「虚偽記載」を行い、その影響が重大であると本所が認めた場合 同左
売買高 最近1年間の月平均売買高が1万株未満又は3か月間売買取引不成立 最近1年間の月平均売買高が5,000株未満又は6か月間売買取引不成立
その他 銀行取引の停止、破産、和議、更生又は整理、営業活動の停止、 不適当な合併等、上場契約違反、株式の譲渡制限、その他 同左
(注)
  1. 「少数特定者持株数」は大株主上位10名及び特別利害関係者(役員等)が所有する株式の総数。
  2. 「株主数」は1単位の株式の数以上を所有する株主の数(大株主上位10名及び特別利害関係者を除く)。


お問い合わせ ik8m-ysmr@asahi-net.or.jp


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