ディスクロージャー研究学会



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文書No.
960625

情報公開法の要綱案

    政府行政改革委員会・行政情報公開部会(部会長・角田礼次郎元最高裁判事)

    96/ 4/25 「中間報告」  

<要旨>
 二十四日に発表された行政改革委員会の行政情報公開部会の中間報告のうち、「情報公開法」要綱案の要旨は次の通り。

◆第1章 総則
 【第1 目的】この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する国民の権利につき定めることにより、行政運営の公開性の向上を図り、もって政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする。

 【第2 定義】この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)行政機関 次に掲げる機関をいう。
イ 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関および内閣の所轄の下に置かれる機関
ロ 国家行政組織法第三条第二項に規定する国の行政機関として置かれる機関
 ハ 国家行政組織法第八条の二の施設等機関および同法第八条の三の特別の機関のうち政令で定めるもの

ニ 会計検査院
(2)行政文書 行政機関の職員が職務上作成しまたは取得した文書、図画、写真、フィルム、磁気テープその他政令で定めるものであって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、行政機関が保有しているものをいう。

(3)開示 閲覧に供し、または写しを交付することをいう。
◆第2章 行政文書の開示
 【第3 開示請求権】何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長に対し、行政文書の開示を請求することができる。

 【第4 開示請求の手続き】行政文書の開示を請求しようとする者は、行政機関の長に対し、請求に係る行政文書を特定するために必要な事項その他所定の事項を記載した書面を提出しなければならない。

【第5 行政機関の開示義務】
 1 行政機関の長は、行政文書の開示の請求(以下「開示請求」という)があった場合は、開示請求に係る行政文書に不開示情報が記録されているときを除き、開示請求をした者(以下「開示請求者」という)に対し、当該行政文書を開示しなければならない。

 2 開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該部分が当該部分を除いた部分と容易に区分することができるときは、行政機関の長は、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。ただし、当該部分を除いて開示することが制度の趣旨に合致しないと認められるときは、この限りでない。

 【第6 不開示情報】第5に規定する不開示情報は、次の各号に掲げる情報とすること。

(1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)であって、特定の個人が識別され、または他の情報と照合することにより識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

イ 法人等に関する情報に含まれる当該法人等役員の肩書および氏名
 ロ 公務員の職務遂行に際して記録された情報に含まれる当該公務員(一定の範囲の者)の官職及び氏名

 ハ 行政機関により従来、公にされているもの、または公にすることが予定されているもの

 ニ 人の生命、身体、健康、財産または生活を保護するため、開示することがより必要であると認められる情報

(2)法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という)に関する情報または事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより当該法人等もしくは当該個人の競争上の地位、財産権その他正当な利益を害するおそれがあるもの、または公にしないとの約束の下に任意に提供され、現に公にされていないもの。ただし、当該法人等または当該個人の事業活動によって生ずる人の生命、身体もしくは健康への危害、または財産もしくは生活の侵害から保護するため、開示することがより必要であると認められるものを除く。

(3)開示することにより、国の安全が害されるおそれ、他国もしくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ、通貨の安定が損なわれるおそれ、または他国もしくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあると認められる相当の理由がある情報。

(4)開示することにより、犯罪の予防・捜査、公訴の維持、刑の執行、警備その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められる相当の理由がある情報。

(5)行政機関内部または行政機関相互の審議、検討または協議に関する情報であって、開示することにより、率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に国民に誤解を与えもしくは混乱を招くおそれ、または特定の者に不当に利益を与えもしくは不利益を及ぼすおそれがあるもの。

(6)監査、検査、取り締まり、争訟、交渉、契約、試験、調査、研究、人事管理、現業の事業経営その他行政機関の事務または事業に関する情報であって、開示することにより、当該事務もしくは事業または将来の同種の事務もしくは事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの。

 【第7 公益上の理由による開示】開示請求に係る行政文書に第6(2)から(6)までに掲げる情報が記録されている場合において、これらの規定により保護される利益に優越する公益上の理由があると認められるときは、行政機関の長は、第5及び第6の規定にかかわらず、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。

 【第8 行政文書の存否に関する情報】開示請求に対し、当該開示請求に係る行政文書が存在しているか、または存在していないかを答えるだけで、第5および第6の規定により保護される利益が不開示情報を開示した場合と同様に害されることとなるときは、行政機関の長は、開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないことができる。

 【第9 著しく大量な行政文書の開示請求】行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が著しく大量であって、事務の適正な遂行に著しい支障を生ずることその他やむを得ない事由があるときは、請求に係る対象文書の相当な部分につき、第10に規定する決定をすれば足りる。

【第10 開示請求に対する措置】
 1 開示請求に係る行政文書を開示するときは、行政機関の長は、開示の決定をし、開示請求者に対し、書面で、その旨および開示の実施に関し必要な事項を通知しなければならない。

 2 開示請求に係る行政文書を開示しないときは、行政機関の長は、請求拒否の決定をし、その旨、書面で、開示請求者に通知しなければならない。

 3 第8の規定により開示請求に係る行政文書の存否を明らかにしないとき、および開示請求に係る行政文書が存在しないことその他の理由により請求を拒否するときも、前項と同様とする。

【第11 開示等決定の期限等】
 1 第10に規定する決定(以下「開示等決定」という)は、開示請求があった後三十日以内にしなければならない。

 2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、事務処理上の困難その他正当な理由により同項に規定する期間内に開示等決定をすることができないときは、一定の期間、これを延長することができる。この場合において、行政機関の長は、開示請求者に対し、同項の期間内に開示等決定ができない理由および延長する期間を通知しなければならない。

 【第12 事案の移送】行政機関の長は、開示請求に係る行政文書が他の行政機関により作成されたものであるときその他相当な理由があるときは、関係行政機関と協議の上、事案を移送することができる。この場合においては、その旨、開示請求者に通知しなければならない。

【第13 第三者保護のための手続き】
 1 開示請求に係る行政文書に国、地方公共団体および開示請求者以外の者(以下「第三者」という)に関する情報が記録されているときは、行政機関の長は、開示等決定をするに際し、当該第三者の意見を聞くことができる。

 2 開示請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されている場合において、第6(1)ニ、同(2)ただし書きまたは第7の規定によりこれを開示しようとするときは、行政機関の長は、開示の決定に先立ち、当該第三者に対し、所定の事項を通知して、意見を述べる機会を与えなければならない。

 3 前二項に定める手続きがとられた場合において、当該行政文書を開示するときは、行政機関の長は、開示の決定と開示を実施する期日との間に当該第三者が不服申し立て手続きを講ずるに相当な期間を確保するとともに、開示の決定後速やかに、当該第三者に対し、所定の事項を通知する。

【第14 開示の方法】行政文書の開示の方法は、政令で定める。
【第15 手数料】
1 行政文書の開示に関する手数料は、実費を勘案し、政令で定めるところによる。
 2 行政機関の長は、経済的困難その他特別の理由のあるときは、その手数料を免除し、または減額することができる。

 【第16 権限の委任】行政機関の長は、政令で定めるところにより、この章に定める権限を当該行政機関の職員に委任することができる。

◆第3章 不服申し立て
 【第17 不服申し立てに関する手続き】開示請求に対する決定に対して行政不服審査法に基づく不服申し立てがあったときは、次の各号に掲げる場合を除き、当該不服申し立てに係る処分庁または審査庁は、不服審査会に諮問して、当該不服申し立てに対する決定または裁決をしなければならない。

(1)不服申し立てが不適法であり、却下する場合
(2)請求拒否の決定を取り消し、当該行政文書の開示の決定をする場合(当該行政文書に第三者に関する情報が記録されている場合を除く)

 【第18 不服審査会の設置】第17に規定する諮問に応じ、不服申し立てについて調査審議するための合議制の機関として、総理府に、不服審査会を置く。

 【第19 不服審査会の委員の任免等】1 不服審査会の委員は、両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。

 2 委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。

3 前項の規定に違反して秘密を漏らす行為に対する罰則を設ける。
 【第20 不服審査会の権限】1 不服審査会は、諮問をした処分庁または審査庁(以下「諮問庁」という)に対し、開示請求に係る行政文書の提出を求め、事件の審議にあたる委員をして、不服申立人に閲覧させずにその内容を見分させることができる。この場合において、諮問庁は、当該行政文書の提出を拒むことはできない。

 2 不服審査会は、必要と認めるときは、諮問庁に対し、不服審査会の指定する方式により処分理由の説明を求めることができる。

 3 前二項に定めるもののほか、不服審査会は、事件に関し、不服申立人、諮問庁および利害関係人(以下「当事者等」という)に書類または物件の提出を求め、参考人に陳述を求め、または鑑定をさせ、その他必要な調査をすることができる。

【第21 不服審査会における事件の取り扱い】
 1 当事者等は、不服審査会に対し、口頭で意見を陳述することを求めることができる。

 2 当事者等は、意見書その他の書類または関係する物件を不服審査会に提出することができる。

 3 当事者等は、不服審査会に対し、不服審査会に提出された書類または物件の閲覧を求めることができる。ただし、第20第1項に規定する行政文書については、この限りでない。

4 不服審査会の審理は非公開とする。ただし、答申は公表する。
【第22 その他の不服審査会関係規定】=略
◆第4章 補則
【第23 利便の提供・運用状況の公表】
 1 政府は、この法律の円滑な運用を確保するため、総合的な案内窓口の整備、資料の提供その他開示請求をしようとする者の利便を考慮した適切な措置を講ずる。

2 政府は、この法律の運用状況に関し、毎年度公表する。
 【第24 行政文書の管理】行政機関は、行政文書の管理に関する定めを制定し、これを公にするとともに、当該定めに従った適切な管理を行う。

 【第25 総合的な情報公開の推進】政府は、公表その他の情報の公開に関する施策の充実を図り、国民に対する総合的な情報公開の推進に努める。

 【第26 地方公共団体の情報公開】地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する情報の公開に関し必要な施策を策定し、およびこれを実施するよう努めなければならない。

 【第27 特殊法人の情報公開】政府は、特殊法人について、その性格および業務内容に応じ、その保有する情報の公開が推進されるよう、必要な措置を講ずる。

【第28 関係法律との調整】=略
【第29 政令への委任】=略
●情報公開法制定に向けたこでまでの経過

.1976年 2月 ロッキード事件発覚、情報公開の機運高まる
.  79年 9月 大平首相、国会答弁で情報公開の必要性を認める
.  80年 5月 民社党が「公文書公開法案」提出
.         省庁の情報提供の手続きなど「改善措置」を閣議了解
.  81年 4月 共産党が「公文書公開法案」提出
.      5月 社会党が「情報公開法案」提出。公明、民社など4野党も
.         共同で「公文書公開法案」提出
.  82年 3月 山形県金山町が全国初の「公文書公開条例」制定
.     10月 神奈川県が都道府県初の同条例を制定
.  83年 3月 臨時行政調査会が答申で「公開制度の調査研究組織」の設
.         置を求める
.  85年 4月 社会党が「情報公開法案」提出
.  89年11月 公明党が「行政情報公開法案」提出
.  90年 9月 総務庁の研究会(局長の私的諮問機関)が制度化への課題
.         を整理
.  91年12月 各省庁が連絡会議で行政情報の「公開基準」申し合わせ
.  93年 6月 参院の野党6会派が共同で「行政情報公開法案」提出
.      8月 細川首相が就任後、法制化を「できる限り前向きに考える
.         」と記者会見
.  94年 2月 行革大綱を閣議決定。「制度化の本格的な検討を進める」
.         と明記
.      6月 村山政権発足に伴う3党合意で早期の法制化を確認
.     11月 行政改革委員会設置法を公布。2年以内に法制定などの意
.         見具申をすることに
.  95年 3月 行革委・行政情報公開部会が発足
.  96年 4月 同部会が情報公開法要綱案発表 


お問い合わせ ik8m-ysmr@asahi-net.or.jp


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