ディスクロージャー研究学会



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文書No.
960514

連結財務諸表のあり方に関する基本的考え方

   

    社団法人経済団体連合会 1996年5月14日発表  

1.はじめに
 企業活動の国際化、分社化経営の進展など、企業経営が大きく変化するなかで、企業内容のディスクロージャーにおける、連結情報の役割が重要になっている。

 企業の実務対応を踏まえつつ、連結経営に対応した有用な情報を開示していくためには、ディスクロージャーの中での連結情報の位置づけを明確にし、連結ベース、個別ベース、それぞれの開示内容の見直しを行っていく必要がある。


2.連結財務諸表と個別財務諸表の位置づけについて
(1)企業活動の多角化、グローバル化に伴い、企業集団としての財政状態・経営成績を示す連結財務諸表の重要性が高まっている。

 今後、証券取引法上は、連結財務諸表を主たる財務諸表として位置づけ、連結情報の開示を主、個別情報の開示を従とすべきである。

商法上は、従来通り、個別情報を主とする。
(2)このような明確な位置づけを踏まえ、当面、証券取引法上の開示については、連結情報を重視しつつ、個別情報の思い切った簡素化を図ることが急がれる。

 連単倍率が低い場合には、必要な補足情報は開示するとしても、重要性の観点から、個別ベース、連結ベースどちらか一方のみの開示が認められてよいと考える。(3)中長期的には、証券取引法上の開示においては、連結情報のみとし、個別情報は商法上、株主に送付する計算書類を添付する形とすることが望ましい。


3.証券取引法上の開示内容の見直しについて
証券取引法上の当面の開示内容の見直しについて、以下の通り提言したい。
(1)連結、個別それぞれの開示の位置づけが明確にされないまま、連結、個別両面で新たな開示が次々と要求されてきたことから、企業の実務負担は限界に近づきつつある。今後の開示制度の見直しは、開示のニーズを踏まえつつ、これ以上の負担の強化にならないようにすべきである。

(2)連結を重視した開示へ移行する場合には、次のような見直しが必要である。
 現行の連結情報の見直し(財務諸表科目の集約、関連当事者との取引に係る開示の簡素化など)

 一定の範囲での個別情報の連結ベースへの統合(事業の内容、研究開発活動の記載の統合など)

 現行の個別情報の簡素化(付属明細表の簡素化、「主な資産・負債及び収支の内容」に係る開示の簡素化など)

 ただし、新たな開示制度の実施に当たっては、十分な準備期間を置く必要がある。(3)商法と証券取引法で異なった様式、記載事項の開示が求められている個別情報については、両者の統一を図るべきである。(商法付属明細書と証券取引法付属明細表の様式、記載事項の統一、財務諸表の用語の統一など)

(4)連結情報を主たる情報とする場合、個別ベースの付属明細表、「主な資産・負債及び収支の内容」をそのまま連結ベースに置き換えるといった見直しを行うのではなく、情報の有用性、コスト・ベネフィットを踏まえ、米国の例も参考に、できるだけ簡素化した形での開示とすべきである。

(5)すべての開示項目に重要性の判断基準を取り入れ、重要性のない情報については、記載の省略を図るべきである。

なお、開示内容の見直しに関しては、別途、具体的な提案を行っていきたい。


4.連結手続き等について
 連結手続き等の見直しに当たっては、国際的な調和の観点を踏まえ、実務上の混乱や負担の増加につながらないよう検討を行うことが重要である。

(1)連結の範囲について
 支配力基準による連結範囲の判定基準は、拡大解釈されることのないよう、例示、ガイドラインの設定が必要である。また、共同支配会社に関する定義、連結上の取扱いの明確化を図る必要がある。

(2)会計処理の統一について
 子会社は、その置かれた環境、事業実態等にあわせ、それぞれ会計方針を決定しており、親子間の会計処理を統一することは、かえって企業集団の姿をゆがめて開示することになる。また、海外子会社の場合、親会社の会計処理にあわせることは事実上不可能である。個別ベースで継続的に公正妥当な会計処理基準が適用されている限り、会計処理の統一は不要である。

(3)連結調整勘定の償却について
連結調整勘定の償却期間は、米国等の基準を参考にし、延長すべきである。
(4)税効果会計について
 個別財務諸表では税効果会計が適用できないことを考慮すれば、税効果会計については、現在の任意適用を継続すべきである。

(5)連結ベースでの資金収支表について
 現在、個別の資金収支表において作成手続きが明確化されていない状況にあり、連結ベースでの資金収支表に関しては中長期的に検討していくべきである。

(6)中間連結財務諸表について
 連結情報の位置づけが明確にされ、個別情報の思い切った簡素化が図られた段階では、中間期での連結財務諸表の開示は検討課題となろうが、実施する場合には、関係会社の対応もあり、十分な準備期間を置くことが不可欠である。

(7)その他
 所得を基準に計算される事業税は、個別財務諸表、連結財務諸表とも「法人税等」に含めて表示することとすべきである。


以上


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