文書No.
960729
開示内容の充実、連結決算、改革の動き。
決算短信や有価証券報告書の開示内容はここ数年、かなり充実してきた。財務諸表等規則の改正によって、九六年三月期から潜在株式調整後の一株当たり当期利益の公表が義務付けられたのも、その一例だ。ただ「IRの基本」である迅速、正確、公正なディスクロージャーを定着させるには、財務・会計面の制度改革や、企業の情報開示に対する姿勢を一層高めることなど、課題も残されている。 現在、大蔵省は今後のディスクロージャーの在り方について検討を進めている。その中で大きなテーマといえるのが、連結決算の充実とデリバティブ(金融派生商品)などの時価情報の開示だ。これは、時価主義をベースとする国際会計基準(IAS)が世界的な潮流となりつつあること、日本企業が国際化していることなどを踏まえた動きでもある。 例えば、連結決算の対象企業の決め方では、出資比率に応じた現行の持ち株基準から、経営への実質的な影響力で判断するIAS流の実質支配力基準に移行することが検討されている。これが実施されると、連結対象範囲が広がるため、投資家はグループ全体のより正確な財務状態、収益力を把握できるようになる。 一部の建設、不動産会社では、親会社からの出資比率を抑えることで、不良資産の受け皿会社を意図的に連結対象から外す例もある。支配力基準が導入されれば、こうした操作も難しくなりそうだ。 連結決算の事業別セグメント情報など、企業自身がより積極的な情報開示を求められている分野も少なくない。 例えば三菱重工業では、最も利益を挙げているとみられる原動機と、九五年三月期まで赤字だった産業機械をまとめて「一般機械」と区分している。 企業の正確な収益構造を把握するため、投資家の間では、実態に即したセグメント情報の開示を望む声が多い。
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