閣僚懇談会資料(96年7月31日日本外人記者クラブスピーチ)
1.基本認識
現下の経済状況は、緩やかながら回復の動きを続けている。今後、日本経済を中長期的な安定成長期道にのせるためには、この機を逃すことなく、抜本的な経済構造改革に早急に着手する必要がある。
構造改革は内閣の最重要問題であり、規制緩和推進計画の改定等を通じ、その推進に努めてきたところであるが、その緊要性、また経済効果ということを勘案すれば、いよいよ政治の決断を持って強力に推進を図る時期に至っている。
2.規制緩和のポイント
特に急を要する状況にある次の5分野を中心に規制緩和を強力に推進すべきである。
(1)高度情報通信
今の段階で既に日本はアメリカに対し、5年から10年の立ち遅れがあると言われて いるばかりでなく、日米の格差は縮まるどころか拡大する一方のようにも見える。
他方、情報通信の分野は、携帯電話の爆発的な売れ行きに見られるように、いろいろ な経済効果を期待できる重要な領域である。
NTT分割問題とは切り離して、参入退出規制、料金規制等の規制緩和の推進を図る 必要がある。
(2)物流
阪神淡路大震災の時に神戸港が使えなくなり、釜山港などに迂回するという経験を経 て、我が国港湾の立ち遅れ、使いにくさ、高コスト構造などが明らかになっている。
このままでは日本の物流の高コスト構造は日本経済発展の阻害要因になることが懸念 される。
また、アメリカには「サードパーティ・ロジスティックス」などのような「複合一貫 輸送」という発想がある。この点、我が国においては、細かな業種別免許制となってお り、「通し」の免許がとれない状況にあるなど、複合一貫輸送が進んでいない。今後は 発想を転換し、ひとつの流れとして物流を総合的に考えていく必要がある。
(3)金融
いわゆる護送船団方式による保護のもと、我が国の金融機関の国際競争力の衰え、さ らには、日本の金融市場の空洞化という現象には憂慮すべきものがある。
他方、諸外国においては着々と規制緩和を進めて、競争力の強化に努めている。
世界の情勢に日本だけ取り残されることのないよう、抜本的改革を断行していく必要 がある。特に、従来のように、詳細な事前規制により、金融機関の淘汰を原則認めない という方針を転換する必要がある。
(4)土地・住宅
日本に住んでいる外国人が口をそろえて批判することに、日本の住宅事情がある。い わゆる「遠、高、狭」の問題のほか、更に街並みの景観、都市防災上の観点も考慮の必 要がある。
今後の政策としては、地価そのものを目標とするのでなく、土地の有効利用による床 面積の供給増大を目標とすべきである。そのため、容積率等の規制緩和や、単体規制の 見直しをより抜本的に推進するとともに、計画的な土地利用を推進すべきである。
(5)雇用
規制緩和に伴い発展が期待される新規産業において、新たな雇用が創出されることと なるが、そうした新規産業への雇用移動が容易に行えるような労働市場の整備が必要と なる。そのためには、一層参入しやすく転出しやすい労働市場への変革が必要であり、 職業安定業務は国のみの業務であるとの従来の考え方を基本的に改め、民間の有料職業 紹介事業、労働者派遣事業の規制緩和を進めることが重要である。
3.現在、構造改革を推進していく正念場にあることを認識し、以上の5分野を中心に、 従来にもまして、より迅速かつ大規模な規制緩和を内閣を挙げて断行すべきである。
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・閣僚懇談会資料 ・(添付)
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平成8年7月12日
高度情報通信
1. 市場区分にかかる規制の原則撤廃
(長距離⇔地域、国内⇔国際、固定⇔移動体、衛星)
2. 参入退出規制撤廃
3. 外資規制緩和
4. 料金については、自由な設定を基本とし、認可制を廃止
5. 通信、放送、CATV事業者間の参入障壁の原則撤廃
(電気通信事業と放送業の融合)
物流
T 抜本的規制緩和の考え方
1. 複合一貫輸送の実現
2. 需給調整の廃止
U 個別領域毎の規制緩和
1. 内航海運の規制緩和
2. 港湾における規制緩和
3. 貨物鉄道事業の運賃認可制の廃止
4. トラックの営業区域等にかかる規制の撤廃
金融
T 抜本策の考え方
1. 護送船団方式の放棄
2. 我が国金融・資本市場の空洞化の防止
3. 抜本的な規制緩和の実施
U 具体的政策
1. 銀行・証券・信託の業務分野規制の大幅緩和
2. 証券業の免許制から登録制への転換
3. 株式委託手数料の完全自由化
4. 有価証券取引税の撤廃
5. 為替管理の撤廃
土地・住宅
T 抜本策の考え方
1. 地価にかえて、土地の有効利用による「床面積」の供給の大幅増加とその価格 の低下を政策目標とする。
2. 従来の建築基準法・都市計画法を見直し、土地の計画的利用を強力に推進する。
U 政策
1. 地域の特性に応じた容積率、建ぺい率の設定
2. 単体規制から街区規制への転換等
3. JIS、JAS等規格の見直し
雇用
1. 有料職業紹介事業の規制緩和(ネガティブ・リスト化)
2. 労働者派遣事業の規制緩和(ネガティブ・リスト化)
医療・福祉
1. 福祉サービスにおける参入の自由化
(シルバーマーク制度の撤廃等)
2. 遠隔診療を可能とするための規制の緩和
3. 医療機器製造輸入販売にかかる規制の緩和
4. 公的福祉施設の設置基準の緩和
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