文書No.
960910
証券取引審議会総合部会 第4回資料
《目次》
1.概要
2.直接金融の流れと機関投資家の役割
3.投資家にとっての、魅力ある証券
4.投資家にとっての、魅力ある証券流通市場
5.証券制度に関する、その他の問題意識
6. まとめ
1.概要 3つの主題: 直接金融の流れと機関投資家の役割 投資家にとって魅力ある証券とは何か 投資家にとって魅力ある証券流通市場とは何か
(とりわけ証券取引情報の処理と公開に関する問題意識) ポイント: 今後の証券市場にとって機関投資家の機能が重要 投資家オリエンテッドな発行・流通市場、企業経営が重要
通信・情報ネットワークを活用した取引所システムの工夫が必要 ここで機関投資家とは: 年金、投資信託を念頭に置く
生保も、金融機関から機関投資家に変質してきた
(機関投資家の影響力の拡大については、3で示す)
(機関投資家の定義については、4で再考する)
2.直接金融の流れと機関投資家の役割
機関投資家の仲介機能と情報について
2.1 直接金融の流れ 金融の自由化、国際化
大企業は証券形態による資金調達に積極的
「表 証券形態による資金調達の推移」 普通社債、ABS、デリバティブ市場の整備 間接金融に加え、直接金融の手段の充実
市場間の裁定が働き始めている
2.2 直接金融と仲介機能 間接金融:金融機関が仲介機能をほとんど単独で担う
直接金融:仲介機関は多岐に
「図 直接金融に関係する機能の担い手」 直接金融の仲介機関:次の担い手が重要 証券の発行と流通の仲介機関:証券会社
証券投資に関する仲介機関:機関投資家
2.3 機関投資家の役割 個人投資家(本来の投資家)の投資パフォーマンスには制約
資金規模、ノウハウの両面で制約 分散投資には一定規模以上の資金が必要 多様な証券への投資、グローバル投資、デリバティブ市場の発達 情報収集、加工、分析、投資の実行等にノウハウが不可欠
ノウハウを生かすにはコストが必要で、小規模資金では負担大 機関投資家を活用すれば制約をクリアできる可能性 この点が機関投資家の社会的な役割
(ただし、機関投資家の行動規範が前提になる) 機関化は経済・社会的に必然の現象 機関投資家が社会的役割を達成できる仕組みや工夫が求められる
これが、証券市場全体の発展を考えるうえでの1つの理念
2.4 機関投資家と情報
「図 機関投資家の機能と情報の流れ」 機関投資家のサブ機能: 本来の投資家のニーズやスタンスの把握 証券市場の情報を収集、加工、分析 投資方針策定もしくは商品設計、(資金集め) タイミング等を見計らって投資を執行
投資結果の分析と、フィードバック 機関投資家の機能発揮と情報: 事前、執行時、事後の各段階で情報が必要 本来の投資家に関する情報:独自入手 それ以外の情報:開示情報、取引所価格等の公開データがベース
証券市場に関する公開情報の量と質、入手の容易さが問題に 投資の執行:機関投資家から証券市場に向けた情報発信 その情報発信が効率良く、即時に、かつ公平に行えるのかが問題に 具体的には: 意図したとおりに、容易に、証券が売買できるのか 他のポジションと比べて情報発信が公平に扱われているのか
情報発信の結果としての売買コストが低廉なのか
2.5 フェアバリューの形成 機関投資家のもう1つの社会的機能: 証券市場間の裁定とフェアバリューの形成
(事前的に)資金調達コストに関して公平な証券市場の形成
3.投資家にとっての、魅力ある証券
機関投資家の成長と証券(証券市場)への影響
3.1 機関投資家の成長
年金、投資信託の資金規模の拡大 「図 年金資金規模の推移」
「図 証券投資信託の残高推移」 生保: 負債、資産構成の変化 間接金融の仲介機関から、機関投資家的な役割へ
投資スタンスの変化 「表 日本の生命保険会社の負債構成」
「表 日本の生命保険会社の資産構成(簿価)」
3.2 アメリカの証券市場の姿: 「アメリカの機関投資家と証券保有構造」
「アメリカの生命保険会社の資産構成、負債構成」
3.3 機関投資家と証券市場 今後の証券市場:機関投資家の影響力が無視できない
とりわけ年金規模の拡大に注目 株式市場の保有構造の例:機関投資家の割合が高まる 銀行、事業会社の保有比率の漸減
年金、投信、海外投資家の保有比率の上昇
「表 株式市場の保有構造」 機関投資家の投資スタンス:本来の投資家からの要請・義務 証券投資パフォーマンスの追求 企業経営に対する監視と発言 投資対象のグローバルな比較
日本の株式も、グローバルな選択肢の中の1つとして位置づけられつつある
東京市場が空洞化しないために:
機関投資家(投資家のすべて)にとって魅力ある市場が望まれる
「図 株式投資収益率、金利、経済成長率」 発行企業やアンダーライター:投資家オリエンテッドな姿勢を 証券価格形成(とりわけ発行価格) 企業経営(利益成長か配当性向か、適切なファイナンスや自己株式消却)
開示の充実(IRを含む)
4.投資家にとっての、魅力ある証券流通市場 機関投資家に期待される機能と流通市場の改革について 機関投資家の定義と規制
機関投資家が機能発揮するための市場環境、インフラストラクチャ
4.1 機関投資家の定義と行動規範 機関投資家とは何か 例:投資顧問会社、投信委託会社の定義 機関投資家以外にも機能的に類似の機関はないのか
機関投資家でない機関とは何か、 機関投資家に対する規制・規範 例:機関投資家の行動規範(プルーデントマンルールの一環として)
リスクに関する規制
4.2 機関投資家と情報、取引コストの問題 投資対象証券の多様性(改革が進む)
総合的な取引コストの問題 総合的な取引コスト:証券市場に関する情報の質と量に係わる
次の2点についての検討が必要 (1)機関投資家が得る情報は開示や取引所データ等をオリジナルとするが、 そのオリジナル情報が質・量ともに充実し、十分に公開されているか たとえば: 取引価格や取引量などの公開が十分か 最良価格情報が、需給量(売買可能量)とともに公表されているか 複数市場(証券取引所、店頭)での取引証券の価格比較が容易か (最良値段での売買注文の執行が保証されているのか)
マーケットインパクトの分析に必要なデータ蓄積が容易に得られるか
(2)投資執行という情報発信が公平かつ効率的に行えるか (マーケットインパクトの最小化、行動の守秘性、即時性の確保) たとえば: マーケットメーカーが価格形成の役割を適切に果たしているか 仲介者を介した発注行為が無用な価格の変動をもたらさないか
証券市場の需給情報に基づく発注が即時に実行できるのか
4.3 情報に関する技術進歩 情報技術と通信ネットワークの発展 投資家にとっての望ましい証券市場のあり方が変化: 取引情報の収集、投資執行の地理的制約がなくなる
複数市場(マーケットメーカーを含む)の比較が容易に すなわち: 戦後50年間に社会・経済環境が変化 流通市場に関する市場集中原則が投資家にとって不可欠でなくなった 情報の充実という視点から:証券市場に技術進歩を取り入れるべき
4.4 証券市場・考えうる改革案
「図 代替的な証券取引所システム」 理念:総合的な取引コストの低廉化 証券取引所からの情報の公開度を高める (→情報の充実と公平性の確保) 投資家と証券取引所システム間の直接の情報交換を工夫する (→情報の守秘性、即時性の確保) 複数の証券取引所システムを認め、競争性を確保する
ディーラー、ブローカーの機能を高度化、専門化する 証券取引所に関して: 会員証券会社と全投資家に対して、情報入手に関する機会均等を高める
板情報の公開度をさらに高める 店頭市場に関して: マーケットメイクによる価格形成の徹底(証券会社に要請される機能の徹底)
現証券取引所と異なった証券取引システムとして発展させる 証券取引所システムの革新と競争: 投資家が直接アクセス可能な市場の確立 通信ネットワークに基づく証券取引所システムの導入
複数市場取引銘柄に関して、端末による最良価格の公表、執行の保証
5.証券制度に関する、その他の問題意識 有価証券の定義を含めた、証券化商品のための制度基盤の拡充 会社型投資信託 有価証券取引税
連結会計、時価会計を主とする会計制度と開示
6.
まとめ 以上 |