ディスクロージャー研究学会



(青空に物事を晒すと虫干しされ綺麗になる)

文書No.
961205

規制制度改革/東京シンポジウムにおける挨拶

    豊田章一郎経団連会長

    1996年12月2日 

 1.経団連会長の豊田でございます。「規制制度改革/東京シンポジウム」の開会に当た り、主催団体の一つである経団連を代表してご挨拶申し上げます。

先ず、本日のシンポジウムの企画・立案段階からさまざまにお骨折りいただいた
 OECD事務局ならびに、外務省、通商産業省の方々に深く感謝申し上げたいと存じま す。また、多数ご参加いただいております各国各界の皆様に厚くお礼申し上げます。


 2.さて、本日のシンポジウムでは、OECDならびに加盟各国の有識者に、規制制度改 革の現状と課題を中心に、国際的な視野に立ってご議論いただくことになっております。 経団連としては、本日のご議論が、次の3点において、内外からの参加者にとり有益な ものとなることを期待しております。


3.第1は、規制制度改革の必要性に関する共通認識の形成でございます。
 国際社会における相互依存関係が深まる中で、世界経済の安定と持続的な発展を図る上 から、先進諸国間の政策協調が重要な課題となっております。政策協調を成功に導く鍵 は、各国の経済政策が基本方向において一致していることでございます。そこで規制制 度の改革により民間セクターの活力の発揮を図り、市場のダイナミズムを原動力として、 経済の活性化を実現することが、各国共通の課題であることを、本日の議論を通じて、 改めて確認いたしたいと存じます。


4.第2は、各国制度の調和に関する相互理解を深めることでございます。
 各国の制度の違いが、投資や貿易の円滑な流れの阻害となることがしばしばございま す。安全の確保や環境保全を意図して設けられた制度が、他の諸国の制度と大きく食い 違うため、事実上の非関税障壁となっている例も少なくございません。経済活動のグロ ーバル化が進む中で、各国の制度が相互に整合性のとれた、調和したものとなっていく ことが最も望ましい訳で、規格・基準の相互認証や国際的な標準化などの推進が強く望 まれます。そのような観点から、本日の議論を通じて、規制行政の国際調整の進め方、 課題などが明らかになることを期待しております。


5.第3は、規制制度改革に関する各国の経験の共有でございます。
規制制度改革の推進に当たっては、規制により保護されている企業や団体の既得権益

 や固有の商慣行などが障害となる場合がございます。また、民間セクター自らによる規 格・基準の策定など、公的な規制に替わる新たな方途が必要になることもございます。 さらには、規制緩和に伴い不測の事故が発生する場合に備えて、製造物責任や保険など 事後的な救済制度を整備する必要も考えられます。こうした場合、各国でどのように対 応しているか、その長所と問題点は何か、といった点について情報を交換していくこと は、これから各国で規制制度の改革を円滑に進めていく上で、役立つものと期待されま す。


 6.以上のような観点から、経団連では、本日のシンポジウムの開催にご協力申し上げる こととした訳ですが、東京における開催ということで、特に第3の点、即ち各国におけ る経験の共有の観点から、次の2点を強調させていただきたいと考えております。


 7.その第1は、日本における規制制度の改革の現状につき、実態を正しく海外の方々に ご認識いただきたいということです。

 日本からの情報発信が必ずしも十分でないせいか、日本の制度は他の先進諸国と異質 であり、その結果、市場アクセスや対日投資が難しいとのご意見を海外の方々からお聞 きすることがございます。もちろん、日本としては、こうしたご意見に率直に耳を傾け、 自ら改善すべき点は速やかに改善していく決意でございますが、同時に、日本では、現 在、急速に規制制度の改革が進んでおり、90年代初頭とは規制制度が大きく様変わりし つつあることについてもご理解いただきたいと存じます。 

 95年3月の政府による『規制緩和推進計画』の策定を皮切りとして、広く内外の要望 ・意見に応える形で規制制度の改革が進められております。11月8日に第二次橋本内閣 が組閣されましたが、橋本総理は、新内閣では、規制制度の改革を梃子とした経済構造 の改革、金融システムの改革などを断行するとの方針を打ち出され、佐藤通産大臣はじ め関係閣僚の方々に矢継ぎ早に指示を出しておられます。したがいまして、今後、規制 制度の改革はさらにスピードアップするものと期待しております。

 こうした日本の取り組みの現状、さらにその過程で直面している課題、公的規制に替 わる新たな仕組み等の情報を、この機会にご紹介申し上げることが、対日理解の促進に 繋がり、また、OECDにおける規制制度の改革に関する検討や各国における改革の推 進に稗益することになれば、幸いと存ずる次第でございます。


 8.各国における経験の共有をめぐる第2点は、OECDの検討をはじめとする規制行政 の国際的な流れ、各国における規制制度改革の実態について、正確かつ最新の情報を入 手することでございます。

 これまでも、日本における規制制度の改革は、海外諸国の動向を踏まえながら行われ てまいりました。例えば、85年の電気通信分野の自由化では、アメリカなどの事例が参 考として重視されましたし、また、予定される金融分野の改革の関係で注目されており ますのは、イギリスにおけるビック・バンの経験でございます。

 先程申し上げましたように、日本は急激な変革期にあるだけに、これまでにも増して 海外の動向を、正しく把握し、評価する必要がある訳で、本日のシンポジウムは、海外 の事例に学ぶ絶好の機会と期待しております。


 9.以上、主催団体の一つとして、経団連がこのシンポジウムに期待するところを申し述 べましたが、本日のシンポジウムがこの期待に応えた内容となり、ご参加の皆様にとっ て、有益な機会となることを心より願い、私からの開会挨拶とさせていただきます。



以上


お問い合わせ ik8m-ysmr@asahi-net.or.jp


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