ディスクロージャー研究学会



(青空に物事を晒すと虫干しされ綺麗になる)

文書No.
961209

「規制制度改革のあり方」

    規制制度改革東京シンポジウム

    セッション (株)日本経済新聞社論説委員会副主幹 小島明 

1.規制の3つのパターン
1)法的・明示的な規制 公的規制
2)行政指導による裁量的規制
3)業界の慣行としての規制

 3)も問題だが、日本の場合は1)と2)、とりわけ2)の不透明な規制が多く、日本の将来の活力を阻害しかねない。

 税負担、あるいは、国・地方の財政(歳出)の規模に於いては、日本の政府は必ずしも「大きな政府」ではない。しかし、不透明な裁量的行政指導が、日本を規制社会にし、「重たい政府」にしている。


 2.金融の空洞化と競争力の劣化をもたらした裁量的行政指導と金融界のモラル・ハザード

 住専問題にみられた行政の失敗、住専問題は、大蔵省の銀行・金融機関行政が期待される機能を果たさず、行政指導方式そのものが住専問題の根本的な原因であることを示した。いわゆる護送船団方式の金融機関行政は、成熟化した日本経済自体にとっても有効ではない。この行政方式は、日本のキャッチ・アップ時代、また、日本の金融が国内的視点で議論できる時代には有効だったが、冷戦が終焉し、グローバルなメガコンペティションの時代を迎え、かつ日本自体が post catch up の時代に移行したいま、適正かつ正当性を失った。その結果生じているのが金融業の空洞化である。

 世界最大の純債権国であり、貯蓄超過の状態にある日本の金融業は、世界でも極めて恵まれた立場にある。にもかかわらず、一行も国際市場に於いて信用格付けのAランクをとれずにいること、その結果として国際市場に於いて全ての金融機関がジャパン・プレミアムを課されている規制は、制度上のスキャンダルである。このジャパン・プレミアムは、個別の金融機関の問題であると同時に日本の金融行政・金融システム全般が制度疲労をきたしていることを象徴している。

 大和銀行がニューヨーク市場から追放されたことも、金融行政・金融システムがグローバルな基準との互換性を失ったことを示すもので、無視できない制度的なスキャンダルである。

 護送船団式な金融行政は、相対的に強い立場にある金融機関(主に大銀行)に、余り努力しても十分な利益があがる状況を生み(超過利潤の発生)、その結果、経営効率化努力が不十分となるモラル・ハザードを生んだ。金融機関全体が真の競争をしていない。しなくても済む状態に問題がある。


3.情報開示の重要性と自己責任体制
 市場機能が十分生かされる為には、市場が健全でなければならない。市場の健全さは、1)新規導入が容易である、2)退出も容易である、3)市場の全ての参加者が必要で十分な情報に平等にアクセスすることが可能である──────ことが必要である。


 情報開示が、市場の参加者の合理的な判断にとり必要な前提条件となる。情報と権限がないところに責任は発生しない。情報の十分な開示かあってはじめて自己責任を問うことが可能となる。

 現状は、情報は権力を持って行政当局にたいして開示されるが、肝心な市場に対しては開示されていない。


4.業界自信による自己規制(慣行)の問題点
例としての金融のATM

5.グローバル競争時代の「改革競争」と日本の課題

6.成功の代償
P.ドラッカー博士の問題意識

7.改革の進め方としてのサンセット方式

8.市場の失敗か、政策の失敗か
 これをもっと点検する必要がある。また、公的機関がかかえる本質的なモラル・ハザードが深刻になりつつある。



以上


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