ディスクロージャー研究学会



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文書No.
970903

行革会議中間報告の要旨

    省庁の再編、財政・金融分野見送り。

    97/ 9/ 3 政府行政改革委員会   

〔省庁の再編〕

一、はじめに
 今回の中間報告は、縦割り行政の弊害を除去し、二十一世紀の我が国の国家行政の担うべき機能を明らかにしたうえで、それに基づいて省庁を大くくりした骨格を示すにとどまっている。今後、簡素・効率化に向け、それぞれの省庁の所掌事務、また共通性のある行政事務の省間の区分け等、多くの課題を詰めていかなければならない。また、各機関の名称も現段階ではすべて仮称であって、最終報告において正式名称を決定すべく、引き続き審議を進めていく必要がある。


二、省庁再編案
(1)省庁編成案
〈内閣に置く機関〉
(1)内閣官房
組織=官房長官。所管業務=総合戦略。
(2)内閣府
組織=官房長官、横断調整担当大臣。所管業務=総合調整、栄典、公式制度ほか。
外局
 組織=宮内庁、(防衛庁=大臣庁=)、国家公安委員会(大臣委員会)(警察、海上保安、麻薬取り締まり)、金融監督庁。

〈内閣の統括の下に置く行政機関〉
(1)総務省
所管業務=人事・組織管理、行政監察、地方自治・分権推進ほか。
外局
組織=郵政事業庁、通信放送委員会、公正取引委員会、公害等調整委員会。
(2)(防衛省)
(3)法務省
所管業務=法秩序維持、出入国管理、人権擁護ほか。
(4)外務省
所管業務=外交、安全保障、開発援助、国際交流ほか。
(5)大蔵省
所管業務=税財政、通貨、為替管理、市場信用秩序ほか。
(6)産業省
所管業務=産業、通商、エネルギーほか。
(7)国土開発省
所管業務=道路、都市、住宅、交通ほか。
(8)国土保全省
所管業務=治山、治水、水利、食料ほか。
(9)環境安全省
所管業務=環境、廃棄物、森林(原生林等)ほか。
(10)雇用福祉省
所管業務=雇用、労働安全、医療、年金、福祉ほか。
(11)文部・科学技術省
所管業務=教育・学術・文化、科学技術ほか。
〈横断的調整システム〉
 これら省庁間に横断的調整システム(内閣官房による総合調整、担当大臣による総合調整、省間での調整の三種)を構築する。


(2)説明
〈総務省〉
 内閣府に広義の調整事務のすべてを担わせ、また、実施事務を担当する外局の多くを付置することは、内閣府の組織を膨大なものとし、かえってその総合調整機能に支障を来すおそれがあることから、人事・組織管理等の行政管理事務、行政監察事務等については別に主任の大臣を長としてもつ総務省を設け、これに担わせる。なお、人事機能等の所属については、総務省のほか内閣官房及び内閣府との関係において引き続き検討する。また、内局として地方行政・選挙、地方税財政事務を担当する部局を設ける。なお、地方自治の重要性を強調する見地から、単なる総務省でなく、自治・総務省とする意見もある。

 外局として置かれる諸機関のうち、郵政事業庁は郵便事業等を担当するもの、また通信放送委員会は電波監理等を含む通信・放送行政を担当するものである。ただし、情報通信産業の振興に係る事務は同委員会ではなく、産業省の所管とする。

 公正取引委員会、公害等調整委員会の有する審判機能や特許審判、海難審判等の機能につき、これを担当する組織のあり方・位置付け(例えば「行政審判庁」の設置)について、今後、真剣に検討する。

〈(防衛省)〉
 防衛庁とすべきであるとの考え方と、独立の省としての防衛省に担わせるべきであるとする考え方との両論がある。

〈外務省〉=略
〈法務省〉=略
〈大蔵省〉
 大蔵省の金融に関する企画・立案は、預金者保護の見地から市場信用秩序の維持に限る。各省共管の金融検査・監督業務は金融監督庁に一元化する。金融監督庁の省令は大蔵省などとの共同省令を廃止し、単独省令化する。

 国税庁については、徴税における中立性・公正性の確保の必要性、また税制の簡素化、地方税徴収機構との一元化に向けて、大蔵省から切り離した組織(行政委員会とすることを含む)とすべきだとの考え方もあるが、地方自治との関係などを問題とする見解もあるので、今後真剣に検討する。

〈産業省〉
 産業、通商、エネルギー(原子力を含む)などを担う省を設置する。マクロ経済に関する機能がすべて内閣府の経済財政諮問会議などに吸収されるか否かは最終結論が出ていない。

〈国土開発省〉
〈国土保全省〉
 単なる「社会資本整備」ないし「公共施設の建設」ではなく、より総合的な「国土整備」を担うべき「国土整備省」構想につき、これを「国土開発省」と「国土保全省」とに分ける。その間の区分は今後精査が必要だ。両者間での総合的な計画調整は横断的調整の方法を検討する。

 「交通」及び「食料の安定的供給」については、前者と「国土開発」、後者と「国土保全」の共通性に着目し、それぞれ「国土開発」及び「国土保全」と一体化する。

〈環境安全省〉
 公害対策にとどまらず、廃棄物対策や従来各省に分散していた環境行政を一元的に統合して担う組織として、独立の環境安全省を設置。薬事、公衆・食品衛生、水道などに関する行政は含まれない。原子力に係る環境・安全に関しては二次的チェック機能の所管についてなお慎重に検討する。

〈雇用福祉省〉
 労働行政は独立すべきではないかとの意見もある。いずれにしても雇用・労働政策が埋没しないような配慮が必要との意見がある。〈文部・科学技術省〉

 核融合、宇宙開発などの推進の担い手はだれか整理が必要。また、国立研究所などの整理統合などを含めて検討が必要だ。

 内閣府に人文・社会・自然科学を総合した総合科学技術会議(仮称)を置き、強力な調整を行う。


三、垂直的減量(アウトソーシング)のあり方について

(1)受け皿組織のあり方
〈独立行政法人〉
 企画・立案事務と実施事務を区別し、後者のうち一定のものについて、国家行政組織外に独立の法人格を有する「独立行政法人」(仮称)を設立する。職員の身分を公務員とするか非公務員とするかは両論あり、現段階では未決定とする。

〈外局〉
 国家行政組織の一部を成すものであって、独立行政法人とは明確に区別する。独立行政法人化の検討対象となる業務のうち、外局となることを選択したものについては、独立行政法人化への円滑な移行のための条件整備を図る。


(2)アウトソーシングの方針
〈現業〉
(1)郵政三事業
 簡易保険事業は民営化する。郵便貯金事業は早期に民営化するための条件整備を行うとともに、国営事業である間は金利の引き下げ、報奨金制度の廃止などを行う。資金運用部への預託は廃止する。郵便事業は郵便局をワンストップ行政サービスの拠点とするなどの変更を前提に国営事業とする。国営事業であるものについては国庫納付金を納付させる。国営事業として残るものは総務省の外局(郵政事業庁)とする。

(2)国有林野事業
 森林行政及び国有林への関与は林産物供給よりも公益的機能の発揮に重点を移すべきだ。国有林野に関する実施部門は現在の独立採算性を前提とした現業としての形態は廃止すべきだ。国の森林管理実施部門は外局、独立行政法人などとし、可能な限り効率的で主体性のある業務実施を行い得るようにすべきだ。


(3)印刷・造幣事業
民営化と外局化の両論があり、現段階では結論が出ていない。

〈地方支分部局〉
 中央省庁の再編とあわせ実施部門の組織の効率化の一環として、必要最小限のものとする。



〔内閣機能の強化〕


一、基本的な考え方

(1)日本国憲法上、内閣は「国務を総理すること」を主要な任務とする存在であることを重く受け止めるべきである。

(2)内閣が「国務を総理する」任務を十全に遂行するためには、内閣の「首長」である首相の指導性発揮が極めて重要である。

(3)以上にかんがみ、内閣の機能のあり方を工夫し、内閣及び首相の補佐・支援体制の強化を図ることが不可欠である。

(4)内閣機能の強化は、日本国憲法のよって立つ権力分立ないし抑制・均衡に対する適正な配慮を随伴すべきである。国と地方公共団体の間では、統治権力の適正な配分を図るべく地方分権を推進する必要がある。国のレベルでは、国会と裁判所の改革を促すことが必要である(国会改革、司法改革)。司法改革の端緒とする意味も込めて、独立行政委員会などが果たしてきた行政審判機能(準司法手続き)にかかわる組織を拡充・確立するなどの検討も必要である。内閣機能の強化は、情報公開法制の確立と不可分の関係にあることが留意されるべきである。


二、具体的措置

(1)内閣機能の強化
(1)閣議の議決方法については、必要とあれば多数決制の採用も考慮する。事務次官等会議で了承された議題でなければ閣議にかけられず、閣僚が議題にないことを発言すると「不規則発言」として忌避される傾向は改め、閣僚間の討議を活性化する必要がある。

(2)関係閣僚会議は実効性・機動性重視の運営を図る。設置目的を明確にし、目的達成後は速やかに廃止し、構成員を関係の深い閣僚に限定する。トップダウン的運用の下で、首相の発意による事案を関係閣僚間で実質的に議論し、その実現の方向づけを与える場として活用する。閣僚間での実質的な討議を促進するため、閣僚懇談会を活用する。

(3)特命事項担当大臣を複数省にまたがる案件について活用する。特命事項担当大臣は閣議了解などの形式によって任務(関係大臣との関係)を明確にし、補佐組織を機動的に整備する。国務大臣の数は大くくり省庁の数に比例して機械的に削減しないものの総数を削減する。

(4)各省の次官、局長など幹部級人事は各大臣に任免権を残しつつ、任免につき内閣の承認を要することとする。


(2)首相の指導性の強化

(1)首相の基本方針・政策の発議権を内閣法上明確化する。内閣は首相の「政治の基本方針ないし一般政策」を共有しつつ、一体となって国政に当たる存在である。首相が内閣の「首長」たる立場において閣議にあって自己の国政に関する基本方針(対外政策や安全保障政策の基本、行政・財政運営の基本やマクロ経済政策、予算編成の基本方針などはもとより、個別事項であっても国政上重要なものを含みうる)を発議し、討議・決定を求めうることは当然である。


(2)首相の行政各部に対する指揮監督に関する内閣法の規定は弾力的に運用する。危機管理関係については「内閣の危機管理機能の強化に関する意見集約」(九七年五月一日)において、「突発的な事態の態様に応じた対処の方針について、あらかじめ所要の閣議決定をしておき、首相が迅速に行政各部を指揮監督できるようにすること」を求めた。これを超え、事後の閣議承認を条件に事前の閣議によらずに指揮監督できるようにすることについては幅広い検討を要する。


(3)内閣及び首相の補佐・支援体制の強化

(1)全体的な組織設計にかかわる問題
 内閣の組織として首相を直接補佐する組織「内閣官房」と横断的な各省間調整事務及び特定の直轄事務などを行う組織「内閣府」(仮称)を置く。内閣府には宮内庁、金融監督庁及び国務大臣を長とする外局を置く。管理事務及び地方自治などに関する事務を行い、大臣の置かれない外局を置く組織として「総務省」(仮称)を設置する。


(2)内閣官房
 1、内閣官房は内閣の補助機関であるとともに実質的に内閣の「首長」たる首相の活動を直接に補助・支援する強力な企画・調整機関とする。その機能は基本方針の策定、政府部内最終調整、危機管理、情報、広報を含む。内閣官房の事務に関する内閣法一二条二項に関し、企画・立案を含めるべく改正する。

 2、内閣官房は首相により直接選ばれた(政治的任用)スタッフによって基本的に運営されるべきものとする。

3、首相補佐官など首相の直接のスタッフ体制を充実する。
 4、内閣官房の組織は現行の五室にこだわらず、首相の意向に沿った柔軟かつ弾力的な運営を可能とする。

 5、情報機能については独立かつ恒常的な組織を設ける。内閣情報調査室の機能・体制を強化する。「合同情報会議」を内閣官房の正式な機関として位置づけ、有効に機能し得るよう配慮する。

 6、内閣安全保障室を改組し、国防に関係する事項や大規模な自然災害を含むすべての危機管理につき、首相を適切かつ有効に補佐できる体制を整備する。

 7、内閣及び首相の指導性が国民に的確に認識されるようにするため、広報機能を強化する。


(3)「内閣府」(仮称)
 内閣府は内閣官房長官の下、内閣官房の総合戦略機能を助け、経済政策、科学技術政策、男女共同参画、防災などの横断的な調整事務を行うとともに栄典、公式制度等の実施事務を担う。「経済財政諮問会議」(仮称)「総合科学技術会議」(仮称)などを設け、その事務局を置く。「経済財政諮問会議」については、経済企画庁の関係機能をその事務局に移行するが、その範囲は今後検討する。首相を主任大臣とし、官房長官がその事務を整理・監督する。同府には調整事務に対応し、必要な担当大臣(複数)を置く。内閣府の外局として置く機関は、大臣を長とする庁(防衛庁)及び大臣を庁とする委員会(国家公安委員会)のほか、宮内庁並びに金融監督庁とする。ただし防衛庁については、大臣を長とする庁とする考え方と単独の省として防衛省とする考え方との両論がある。国家公安委員会については、従来の警察事務のほか、海上保安、麻薬取り締まりに関する機能をも担うこととなるため、委員会及び事務局を改組し、それぞれの実施組織を設置する。


(4)総務省(仮称)
 内閣及び首相の補佐・支援体制の強化の一環として、内閣官房及び内閣府とともに「総務省」を設置する。






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