ディスクロージャー研究学会



(青空に物事を晒すと虫干しされ綺麗になる)

文書No.
980905

ビックリバン5

    日中合弁は戦争賠償支払システム

    ヤオハンはその象徴か まず合弁会社の正常化を 日本証券新聞97年9月30日  

 香港で中国の不良債権の額は「国家機密」になっている。これに触れると即刻逮捕されるという。一国二制というが報道の自由なんてあったものではない。情報開示も日本の銀行の真似をして「隠し通すつもり」らしい。これは市場に疑心暗鬼を呼んで信用不安を増幅することは日本の例で明らかだ。米国の例をみても隠していると信用格付けは引き下げられる。それはやがて金融・通貨不安につながる。これでは資本取引は停滞して、やがて崩壊する。日本がそれに苦しんでいるのが良い見本である。

 資本の輸入を望むなら西欧並の情報公開せざるを得ない。中国のいう「改革・開放」とはまさに情報公開のことである。旧ソ連はペレストロイカ(改革)のためまずグラスノスチ(情報公開)した。中国は情報公開せずに資本主義化(株式会社化)するというがこれでは公正な株価をつくれない。グラスノスチしたソ連みたいに混乱するだけだというが、体制の変革には多少の混乱は避けられない。むしろ「自由」が確保されないところに「資本」はやってこない。香港でこれが試される。


 さて、中国共産党大会の最後の日にヤオハン・ジャパンが倒産した。香港さらに中国に惚れ込んだ和田代表、そして香港返還時の流行歌にも唄われ、日中合弁事業の「成功」(?)の代表例だっただけに倒産が同大会最初の日だったらそれなりの影響があったかも知れない。胸をなで下ろしている向きもある。

 倒産したヤオハン・ジャパンは資産が2.2倍水増しされていた(97年3月期千六百億円が修正すると七百億円)。第一部上場会社であり立派な監査法人(中央)が「適正」意見をつけているが、水増し分はほとんど海外向けの(架空?)資産。出向者の人件費が資産(未収金)に入っていたりする。なぜこんな無理をしたのか。一言でいえば華僑にのせられて有頂天になったからだった。こうして東洋一といわれる上海の店や香港の店も中国人の手に落ちる。


 大蔵省の統計によると日本からの対中直接投資は国交回復後昨年九月までで累積一兆七千五百億円(届出ベース)。同じ時期、アジアでは対インドネシア、シンガポールに次ぐ規模である。日本のあらゆる産業が進出している。しかし日中合弁企業は大半が赤字で、配当を日本に送金した話は聞いたことがない。台湾や返還前の香港からは投下資本を上回る配当を回収したが、本土の場合は利益がでそうになると人件費を引き上げさせられる。それでもまだ利益がでそうだと国営企業からの資材の購入費を引き上げさせられる。M商社、M電器も「会社ではない」という。資本の形成より労働分配優先で人民公社みたいという。そして真相は実は「戦争賠償支払システム」だという。経済交渉の時も「戦争の被害」の話がちらちらでてきて気の弱い日本人サラリーマンはたじろぐのが実状という。大変な商売人だが、これでは必ず行き詰まる。だれも出資しなくなる。すでに日本の対中投資は九六年前年比三分の一に激減した。それに設備過剰、公害蔓延だ。中国のビッグバンは国営企業もさることながら合弁企業の正常化からとりくむべきだ。            (四条耕三)


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