文書No.
980909
日本証券新聞97年10月29日
前週この欄で香港を含む中国の通貨・株式の「暴落は終わりか始まりか」とどちらかといえば「始まり」を予想したがその通りになった。大新聞は「世界同時株式暴落」などと現象面だけみて解説しているがピントはずれである。毎回連続してこの欄をお読みの読者は香港ドル・株安の本当の原因を理解しておられるものと思う。また前週の香港ドル・株式の暴落で投機筋が誰でそのターゲットが何かはっきり分かったと思う。マハティール(マレーシア首相)対ソロス(投資家、慈善家)で当初「イスラム対ユダヤ」の戦いの様相だったが、いまや「中華対ユダヤ」の抗争の構図が明確になった。 ワシントンでの米中首脳会談に向けて仕掛けられてきたアジア通貨投機はここで「仕上げ」の段階といえる。投機家は先物と組み合わせているので「相場の乱高下」が大好きだ。仕組んでから四条に「情報」を流し動かす。揺さ振りをかける。前週の相場つきからみて米中会談は中国側にあまり良い結果にはならないと予想されるが、それを米政府筋からユダヤ系投機家が情報を得たとみられる。特に経済問題で前進は少ないと判断される。人権や核兵器、台湾などの問題で手間取っている間も対中貿易赤字を米国はもんだいにするからである。 米ソ冷戦時代対ソ戦略に忙しかったCIA(中央情報局)は今や経済対策に全力をあげている。ユダヤ系の金(かね)と情報はこれと連携して動いている。日本の経済人も「すぐ隣にCIAがいる」と常日頃気をつけているという。通貨投機は経済戦争の一側面を表わしている。 95年の円高修正も大蔵省の高官のウルトラCと日本では認識されているが。とんでもない無理解でワシントンの作戦通りの結果で、情報を得たユダヤ系銀行がちゃっかりサヤをぬいたのは有名。高官はピエロみたいなもの。 香港ドル安は直接的には日本の銀行の貸付金が目減り(為替差損)するうえ香港株安はこれを大量に組み入れている投資信託の成績悪化をもたらす。アジア各国への日本の輸出は全体の四0%も占めるだけにアジアの疲弊は影響が大きい。特に内需不振のおりにアジア輸出の急な停滞は痛いことは前に書いた。 当面、タイ、インドネシア、マレーシア、韓国などの通貨・株価不安はどうなるか注目されるが、少なくとも通貨はピーク比五割安まで行くだろう。というのも中国が九四年人民元を五割安に引き下げたのが、アジア諸国の国際競争力を一気に失わせたわけだから、とりあえず対中イーブンまで為替調整する。元を五割も切り下げてインフレにならないのは中国国内の失業者や浮浪者の賃金を買いたたいているためだ。ということはアジア各国は浮浪者並みの賃金にしろということである。デフレの輸出である。 しかも相場は必ず行き過ぎる。一割ー二割の幅で揺れる。投機筋はボラティリティ(変動性)が高いことを望む。香港の株式はレッドチップの中にはすでに半値以下も出ているがさらに「八がけ五割引」までゆく。中国大陸系の株は特に下げが厳しいだろう。香港バブルの崩壊だ。
(四条耕三) |