文書No.
980911
日本証券新聞97年11月18日
総会屋にたいする利益供与事件は銀行・証券から重厚長大産業の経団連銘柄まで暴露されて「総腐敗」の様相を呈している。昔から言われていたことで「いつかは清算しなければならない」ことだったのがようやくその時がきたわけだ。当然の事だが、気になるのは、何故そんな大金を総会屋に払ったのかということ。これがいまだ明らかになっていない。ただ総会屋が「質問」と称して会社側に送りつけたなかに「カネ、オンナ」事件以外に「規制違反」の指摘が数多く含まれていたという。「損失補填」や「飛ばし」に加え「宇宙遊泳」、「浮き貸し」、「地上げ」に至るまで格好の強請のネタである。バブルのときやっていた事のほとんどは総会屋のネタた。規制違反が横行したからだ。 その清算を自ら行わなかったツケがいま払わされているわけだが、逆にいうとそれだけ規制が多かったともいえる。大蔵省をはじめ官僚が事業の許認可権を握り企業を思うがままに操ってきたことが、企業に自主性を喪失させ、無責任にさせ、ついに自尊心までなくさせた。トヨタなどオーナー経営者に夜経営は確固たる信念を持っている(ようにみえる)。しかし内部から成り上がりのサラリーマン経営者はとどめもなく「くさい」。「ほど」を知らない。「自分だけ良ければいい」主義だ。すべて「お役所のいうとおりやっている。お役所に聞いてくれ」と逃げていた。 最近コーポレート・ガバナンス(企業統治)なる言葉が盛んに使われているが、バブルの時代もそれ以前も以降もこんなものは日本にはなかった。企業を統治していたのは株主でもなく債権者でもなく、明らかに官僚だった。これを「官僚統制型コポレート・ガバナンス」と呼んでおこう。企業はなんでも官僚に説明しておけば「情報開示」を済んだと思っていた。こうして役所に情報が集まり、これでコントロールしていたのが役所だ。なにしろ「情報時代」だから。ただし役所は「ここちよい」話は耳を傾けるが、「嫌な話」は「内話」(ないわ)と称して「聞かなかった」ことにする。大和銀行事件が良い例である。無責任このうえない。ディスクロージャーの風上にもおけない。従って官僚統制型コーポレート・ガバナンスは「秘密が秘密を呼ぶ」”ディス”がないクローズ(閉じる)状態である。悪は栄える体質になる。 これに対してビッグバンは「市場原理型コーポレート・ガバナンス」を提唱する。いままで役所にしかいっていない情報や総会屋に握られた秘密などを市場に全部さらけ出して市場の評価を得てはどうか。スッキリすると思う。悪材料出尽くしで市場は立ち直れる。今のような状態では「疑心暗鬼」でいつまでも「軟弱地合い」が続く。ヤオハンのように倒産したら資産が二分の一もなかった報告を適正と監査証明を出さないで貰いたい。監査法人も一緒に解散して出直して貰いたい。この一例が日本の会計の信頼性をどれほど喪失させたか大蔵省も会計士協会も全会計士とともに反省し、責任ある(アカウンタビリティー)態度を示して貰いたい。完全なるディスクロージャーがグローバル・スタンダードだ。それなくしてビッグバンはない。日本版ビッグバンの最初は銀行も保険も証券もまずディスクロージャーである。
(四条耕三) |