文書No.
980912
日本証券新聞97年11月25日
前回、前々回、よく読めば分かるように警告したとおり山一証券は破綻し、廃業、解散破する。行き詰まったのは、格付けが引き下げられたためとか、厳しい市場原理が働いたとかいわれているが、そうではなくいわば「強制廃業」ということを証拠を示しつつ真相を解明したい。 まず山一は確かに総会屋に対する利益供与事件以来「衰退」していた。「大手四社」の内の一社の地位は、外資系や国際証券に奪われそうだった。このため同社は人員整理などリストラ策を打ち出すほか外資系金融機関との提携などで延命策を模索していた。「会社更正法適用申請も含め検討した」と社長が言明している。 確かに損失補てんにからむ「飛ばし」による簿外負債を抱えていたため、外資系も二の足を踏んだ、リストラはこの含み損を表面化させざるをえないハメに陥った、ただ大蔵大臣は十一月十七日二報告があったというが、「監督厳しい」大蔵省・証券監視委員会がそれまでに、正確な金額は別にして知らないはずはない。 大蔵省長野証券局長は「簿外負債は二千億円超あるが自己資本四三00億円ある」とハッキリ言明した。債務超過ではないのに会社更正法が適用できないことはこれだけの歴史と規模の会社としては頭をかしげざるを得ないという見方も可能。 三洋証券は日銀特油はないが、更生法が適用されたのと比較してもおかしい。 山一はすでに一回日銀特油で再建された「前科者」という事情もあるうえ同じ会社にしかも大蔵省の免許制のもとさらに総会屋事件・損失補填事件・飛ばし事件と続けば「死んでもらう」と当局も考えても無理はない。格付けや市場原理はマスコミの事後説明としてはうなずけるが、未だ免許制のもと監督官庁の責任を回避しようとするものだ。ハッキリと免許停止にしてはどうか。マスコミに書かせて「自主廃業」に追い込むようなやり方はズルいという声がテレビ司会者さえ指摘している。山一の人々は「死んでも死にきれない」気持ちだろう、 「投資家保護」のため日銀特融をするのは「預かり資産」二四兆円を返却するためであるが、「不正流用」があったらどうなるか。外債、るいとう、ミニ株投資など現物が証券会社にないとか株券が顧客の名義になってないなどの理由で帰ってこない可能性がある。混乱は避けられない。 また山一はグループで六兆円の負債があり、連結で「債務超過」になるかもしれない。飛ばしがそんな金額で済んだとは思われないからだ。飛ばしで利益を得た法人も問題になるだろう。 いずれにしてもビッグバンを控えているとはいえあまりにも大きな「摘出手術」である。これだけの荒療治なら、まず監督者の大蔵の責任を明らかにして且つ情報開示をしてからにしてもらいたい。そうすることが市場経済化への正しいみちである。闇雲に日銀特融を先走って決めるのは「未だ隠していることがある」と勘ぐられてもいたしかたがない。こんなゲームはいくらやっても生産的ではない。やはりビッグバンはディスクロージャーが先決だ。
(四条耕三) |