文書No.
980914
日本証券新聞97年12月16日
信用不安対策としてにわかに十兆円の国債を発行しようという梶山案が浮上、、政府・自民党が真剣に検討しているというが、
(一)金額が小さすぎて却って不信感を募る 実際、竹村氏もいうように米国からの情報では今週が日本の金融危機のヤマ場だというのは金融債の行き詰まり状態を指しているらしい。例えば日本長期信用銀行は今年三月末十六兆円あった金融債は九月末十三兆円と三兆円も減っている。預金も同じ時期に一兆円以上減っている。九月以降もさらに減少しているのは間違いない。 これまでのように償還すれば新規発行で補えば問題はないが、それが信用力の低下と超低金利時代を反映してスムーズにいかない。ほんの六ヶ月で四兆、五兆円の金(かね)が流失すると健全な銀行でも流動性危機に陥る。ましてや大量の不良債権をかかえる銀行となると大変な事態になる。加えて海外での信用はがた落ちだから事実上海外活動はストップしている。スイス銀行に外国部門は手渡していく。ジャパン・プレミウムどころではない。それがいま起こっているのである。長期の貸付金はおいそれと返してもらえないからなおさらだ。 日本債券信用銀行や日本興行銀行も事情は同じだが、日本長期信用銀行の場合をみても明らかなように金融債の発行残高は十三兆円もある。全額デフォルトになるとそれだけで、「梶山国債」で補填できない。今時十兆円で金融システム不安対策といっている政府・自民党の政治感覚を疑う。 金融債は預金と違って法律で保護するとは明記されていないが、大蔵省・日銀筋はなぜか「保護する」と明言しているようだ。これはまさに金融債デフォルトの危機を「いわづに語った」ことでもあるが、またしても当局のお得意の超法規的措置となるか。またしても大蔵の裁量で救済が進むのか。 しかし金融債は市場で毎日取り引きされているので「保護」するには市場を閉鎖するしかない。そして銀行は営業停止し、金融債は償還時に額面で返還するするしかないか。これだけでも大いなるパニックであるが。もし金融債保護を宣言せず市場閉鎖しなかたら金融債は暴落する。これだと完全にパニックだ。 金融債は第二地銀や信用金庫など雑金が多く保有しているので、金融債が暴落し紙屑になるとこれらの金融機関は軒並み連鎖倒産するのは明らかだ。市場閉鎖し償還時に額面で返済することにし、この間日銀特融するか? いずれにしても大蔵省は本気でビッグバンを進めざるをえない時期にきた。正念をいれてかからないと日本を危うくする。
(四条耕三) |